フジスレートはセメント瓦の製造・販売を基軸に創業して以来、長きに渡り、安心・安全に暮らせる住環境の実現に貢献し続けている会社です。早くからCO2排出量の削減に向けて積極的に取り組んでおり、近年、宣言した「サーキュラーインプット30 2030」もその延長線上にあります。セメントを扱う会社でありながらセメントの量を減らす取り組みに力を尽くす理由を、馬渕祐三社長に伺いました。
セメントは製造時に多くのCO2を排出しており、その量はCO2排出量全体の約7%にもなります。セメント瓦やタイルの製造でも、通常は1000-1100度の高温で焼く工程があり、地球環境への配慮は不可欠なのです。当社では瓦製品の主原料や製法を工夫することにより、通常の製造方法に比べCO2排出量の削減に成功しています。こうして生まれた「エアルーフ・シリーズ」は軽さや強度が特長で、時代のニーズに対応した製品として注目されています。
次なる目標として掲げている「サーキュラーインプット30 2030」は、2030年までに原材料の30%をサーキュラー素材(循環廃棄物材料)に変えることを目指す取り組みです。ヨーロッパではサーキュラー素材の使用率を高めることがスタンダードになりつつあり、当社でも「サーキュラーインプット」を目指したチャレンジを始めています。
着目している素材の一つは、鉄を生成する際に大量に出る高炉スラグです。それを粉々に砕いて微粉末の状態で添加することにより、セメントの量を減らします。高炉スラグは強アルカリ性なのでセメントほど瞬発的な強度は出ませんが、時間とともに結晶化し、強度が増していきます。また、長期間、強度を維持でき、価格も安価にできるため、公共事業用途で貢献できるのではないかと期待しています。
サーキュラー素材での新建材開発は、慶應義塾大学のKMD(慶應メディアデザイン)との共同研究を行っています。牡蠣殻、陶器、デニムくずなど、さまざまな廃棄物での新素材を模索しています。廃棄されるものを混ぜてセメントボードを作ると、表情豊かな製品になります。今年発売したセメント製品の「フラワータイル」は、セメントに色鉛筆の芯、カイロの中身などを混ぜることで、セメントそのものに自然な色を生み出すことに成功しました。塗装の必要がなく顔料自体を固めて作っています。
当社がそうした「焼かない」「塗装しない」建材づくりに取りんでいる背景には、「100年企業になる」という目標があります。バトンを渡す次世代の人々の幸せを願い、これからもサーキュラーエコノミーの実現に力を尽くしていきたいと考えています。