コルク栓のアップサイクルをしている永柳工業様では様々なコルク製品を作っています。一般の家庭で見かけるものでは、床材やコルクボード、コルクのコースターなどによく使われているコルクシート。インテリア品や焼印加工をしたワイン用コルク栓も取り扱っています。ほかにも工業用では、ブレーキ材や離型剤に使うための樹脂やゴムとブレンドしたコルク粒製品などを製造しています。
コルクについて教えてください。
コルクは、コルク樫という木から剥いだ樹皮です。コルク樫は、寿命となるまでの樹齢が200~300年くらいあり、成木になってから樹皮を剥いでコルクを収穫するのですが、樹皮を剥いだ後、9年経つと、樹皮が元通りに再生しますので、またコルクが収穫できるのです。
この繰り返しで、樹齢が尽きるまでの間に20回以上もコルクを収穫することができます。切って木材にすれば木はそれで終わりですが、コルク樫の木は、皮だけとって木は切りませんから、何度も使えるのです。だから、これは林業というより農業ですよね。
それだけではありません。コルク樫が樹皮を再生するときには、コルク樫は多量の二酸化炭素を吸収します。つまり、今問題になっているCO2を吸収してくれる環境にやさしい木なのです。地中海全域で、年間1,400万トンものCO2を吸収するといわれています。
コルクの特性や特徴は?
コルクの特性を並べると、次のようになります。
・軽くて弾力性がある。
・断熱・防音性に優れている。
・摩擦係数が高い。
・液体に対して疎水性に優れている。
・質感・感触がよい。
・安全性が高い。
・腐りにくい。
こうした特性から、さまざまな分野で活用することができるのです。
昔は捨てられていたコルク
我が社の創業は明治時代にまでさかのぼります。明治時代になると外国からワインが輸入されるようになりましたが、封を開けてワインを飲めば、コルク栓はいらなくなりますから川に捨てていたのです。今では考えられませんよね。
これが軽くて加工しやすいので、拾って洗浄し、小さく加工して目薬の栓にしたのです。当時は現在のような便利なキャップはありませんでしたので、飛ぶように売れた、と聞いています。ですから、ゴミ拾いから我が社はスタートしたのです。
その後、競馬の馬としてサラブレッドが輸入されたのですが、船で運ぶときに馬の蹄が痛まないように、馬を入れる部屋の床にはコルクが敷いてありました。馬が日本に着けば、コルクは不要となり、これもやはり捨てられていたのです。
これに目をつけて回収することでコルクを大量に調達することができ、会社が発展しました。その後、ワイン、シャンパン、サイダーなどの産業の拡大に合わせコルクの需要が増えるのに伴い、我が社も拡大していきました。
コルクを通じてRE機構と協業
ある時、コルクの栓の回収をしているRE機構さんから、「これをリサイクルできませんか?」という相談があったのです。我が社は元々コルクの回収から始まった会社なので、先祖返りみたいなものだな、と思い協業することにしました。
RE機構さんは特定非営利活動法人で、心身に不自由のある方々、障がいのある方々の雇用の機会を拡げ、安心して意欲を持って働くことができる環境を創り出されています。
ここが大切なのですが、単なるリサイクルではなくてアップサイクルをする、ということで意見が合ったのです。それと、RE機構さんの社会貢献のお役にも立てればいいな、という思いもありました。
障がいのある方々の雇用の機会に
当初はワインを多量に消費する会社・組織に訪問し、要らなくなったワイン栓を貰っていました。ライオンズクラブや帝国ホテルなどにも行きましたね。その後、お店や飲食店にワイン配達している会社に、抜栓後のワイン栓を回収してもらえないかお願いしたのです。そのツテで、たくさんのコルク栓が集まるようになりました。
回収したコルク栓は、洗浄してゴミなどを取り除き、ワインの栓やシャンパンの栓などに分別します。コルク栓といっても、いろいろな種類があります。栓の形や質によって触った時の温度が違うので、栓の入っている箱に手を入れて、冷たいなら合成栓、暖かいなら天然栓、といった具合に分別できるのです。
そういった分別を障がい者の方々が行っています。現在は墨田区の協力を得て、墨田区の墨田ふれあいセンターの地下倉庫の一部を、コルク栓の集積場として貸してもらい、その分別を墨田区内の障がい者施設の方たちに協力してもらっています。
コルクはエコで可能性のある素材
これまで、リサイクルコルクで商品を開発し、販売をしていましたが、これからも、みんなでアイデアを出し合い、面白い商品の開発を続けていきたいと思います。コルクは環境に優しくて、しかも広く活用できる素材です。この素材を通じて、社会の一員としてその発展に貢献を続けたいと思います。